最高裁判所第三小法廷 昭和54年(オ)70号 判決 1979年7月24日
上告人
松江市
右代表者市長
中村芳二郎
右訴訟代理人
片山義雄
被上告人
岩田美和子
外二名
右三名訴訟代理人
松永和重
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人片山義雄の上告理由第一点及び第二点について
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係のもとにおいて、本件国道を道路外の施設に入るために右折しようとした上告人バスの運転者には、直進対向車が法定の最高速度を時速一〇ないし一五キロメートル程度超過して走行している可能性のあることを予測にいれたうえで右折の際の安全を確認すべき注意義務があり、未だ無過失とはいえない、とした原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は独自の見解に基づいて原判決を論難するものであつて、採用することができない。
同第三点について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、上告人バスの右折と本件衝突事故との間に相当因果関係があるとした原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は、採用することができない。
同第四点について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件が原審係属中に第一審被告有限会社佐藤洋服店、同石倉俊男が被上告人らに対してした合計一一〇〇万円の支払は、第一審判決の仮執行宣言によるものであつて、損害の填補がされたものとして控除すべきでないとした原審の判断は、正当として是認することができる(最高裁昭和四四年(オ)第九九三号同四七年六月一五日第一小法廷判決・民集二六巻五号一〇〇〇頁・大審院大正一五年(オ)第二〇七号同年四月二一日判決・民集五巻二六六頁参照)。論旨は、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(環昌一 江里口清雄 高辻正己 横井大三)
上告代理人片山義雄の上告理由<省略>